開いた傘から滴る
縮こまらせた腕を濡らす
骨まで冷たくなってゆく

扉には鍵をかけずにゆく
かえる道など要らないの
ただ前に進めば良い
紫陽花の咲く路地まで

あのひとも濡れたのだろうか
大きな背中を傘からはみ出させて
こちらを振り返りもせずに

かじかむ指のつめたさも
凍りつく体温も
紫の雨にかすんでゆく



Nov.2,2014